長野から広島に移住した私が、広島風お好み焼きの素晴らしさについて語ってみた。

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「ジューーーー」とキャベツが焼ける音。「シャッ、シャッ、シャッ」と麺を混ぜる音と「カッカッカッ」とヘラがこすれる金音。立ちこめる湯気と匂い。熱々の鉄板の上で作られるそれは、目と耳を楽しませ、胃と心を満たしてくれる。広島の食文化の一つであり、広島を象徴する食べ物。もう何だかおわかりだろう。
今回は、広島の名物「お好み焼き」について語りたいと思う。

お好み焼きをより美味しくさせるのが形だ。
きれいに丸く伸ばした生地は、食べる前から美味を伝える。生地を丸く伸ばすのは技術よりも、「美味しく食べてもらいたい」という気持ちが形に表れる。
広島のお好み焼きは、どこも同じ味ではない。卵や野菜などの食材にこだわる店もあれば、焼き方にこだわる店もある。店ごとの工夫や努力があり、味や食感に違いが生まれる。
ただ、どのお店も共通して守っているものがある。それは、お好み焼きは常に“庶民の食べ物“という慣習だ。そのため、価格に大きな影響を与えるような高価な食材は使わない。
お好み焼きは戦後、食糧が不足していた中、少量の小麦粉と野菜だけで作れる食べ物として誕生した。広島県民の知恵が生んだ料理と言える。誕生から今に至るまで、庶民の食べ物という慣習は、広島県内1700店舗のお好み焼き屋に脈々と引き継がれている。

お好み焼きは、広島の県民性をよく表している。
私は長野県生まれの長野県育ちで、広島に越してきて6年になる。長野の名物は信州蕎麦だが、作り手と客が顔合わせることはない。店主は黙って作り、客は黙って食べる。他人をあまり干渉しない長野県民の人との距離感がよく表れている。
それに比べて広島は、お好み焼き屋ではいつも人の話し声や笑い声が絶えない。店主と客もそうだが、知らない客同士会話することも珍しくない。人との距離感が近いのだ。
私がはじめて広島に来たときは驚いた。広島の人は誰にでもすぐに親しく話しかけ、色々と世話を焼きたがる。良く言えば親しみやすく、悪く言えばお節介。人情味に溢れた県民だ。お好み焼き屋の雰囲気が温かいのはきっと広島県民だからだろう。

広島のお好み焼き屋で食べるお好み焼きは、ただお好み焼きを味わっているのではない。知らず知らずのうちに、広島の県民性と慣習と歴史も一緒に味わっているのだ。
広島を知りたければ、お好み焼きを食べればいい。一枚のお好み焼きには、広島がぎゅっと詰まっているのだから。