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毎日使う箸の美を私なりに語ってみた。

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すらりと伸びた二本の棒。
一本では用をなさない。しかしそれが二本揃うと日本の食卓には欠かせない道具へと変わる。
日本人はこの二本の棒を自分の指先の様にあやつり、料理を口へと運ぶ。
つまみ、割り、かき混ぜる。たった二本の棒がもたらす恩恵は、日本人なら誰もが知っているところだ。
今回は、そんな日本の食文化には欠かすことのできない「箸」について語りたいと思う。

箸が使われ始めたのは飛鳥時代。中国大陸や朝鮮半島との交流の中で、仏教と共に伝わってきたと言われている。ほかにも、鳥のくちばしからヒントを得て創られたという説がある。「くちばし」の〝ばし“で箸となったのだ、と。鳥からヒントを得るというのは日本人らしい話で、私は好きだ。

使う箸を決める際、何を基準に選ぶだろうか。おそらく多くの人は使いやすさだろう。箸には、形をはじめ、素材、太さと、さまざまな違いがある。
心臓部と言われているのが箸の先端だ。先端の細さや形で使い勝手が変わる。それは、想像に難しくないだろう。
持った時の感触、指にかかる重さ、つまんだ時の感覚。それらすべてが気に入る箸と出合えたなら、食事の時間も愉しくなるはず。こだわりのある人は、食べるもので箸を変えると言う。そこまでこだわらないにしても、一膳、二膳の箸はこしらえたいものだ。

かくいう私も、二膳の漆箸を愛用している。
漆は空気中の水分と反応し、色が透ける性質がある。使いこむほど透けてゆき、発色がよくなる。漆がもたらすのは色彩美だけではない。時間と共に硬くなってゆく特徴があり、防腐、防水にも優れている。その効用もあって、箸を長く育てられるというわけだ。箸と漆が出合ったことで、〝食べるため“から〝時間と共に育てる“へと、箸は姿を変えた。
当然、漆箸に施される装飾は美の一つだ。職人が創意と工夫を凝らし飾りつけしている。その精緻な創りは工芸品とも言える。
変わりゆく漆の艶やかな色合いと、職人技が生みだす装飾との妙を愉しむのも味だ。

最後に、食事での箸の役割について語りたい。
私たちが食事でいただいているのは、食べ物ではない。私たちは自然に生きる動植物たちの命をいただいている。命をいただき、自身の命を繋いでいる。
箸は命を口へと運び、命の橋渡しをする。そういう意味では神聖なものと言える。それを象徴するかのように、収穫を願い感謝する祭りでは、神前の供え物と一緒に箸が添えられる。食事の際、「いただきます」と一礼した後に最初に触るのも箸だ。
箸で食べ物を〝刺す“のはマナー違反だ。みっともないからではない。命に対して失礼だからである。箸のマナーは命への畏敬の表れでもあるのだ。
先に語った、「こだわりのある人は、食べるもので箸を変える」というのは、実用性だけではなく、こうした命を敬う心があってのことだ。

道具としての箸。工芸品としての箸。時間と共に育てる箸。命の橋渡しをする箸。たった二本の棒にこれだけの顔がある。
あなたは、どんな顔を愛でるのだろうか。

 

 

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